はじめに

東京2020パラリンピック開会式で演出・チーフ振付を務めた森山かいじが描いた一枚の絵から本作は生まれました。開会式のキャスト・スタッフに新たな仲間が加わり、ろう者の俳優・ダンサー、義足のダンサー、一輪車パフォーマー、車椅子で即興表現を得意とするパフォーマーなど、多様な背景や感性を持つキャストが舞台を躍動させます。

この舞台は、詩人が不思議な列車「SLムジカ」と出会うことから始まります。「ムジカ」は、ラテン語で「MUSIC=音楽」の語源で、かつては音楽だけではなく、舞や詩など、広く豊かな芸術を内包した言葉として使われていました。

本作では「ムジカ」をテーマに、キャストも観客も一緒に列車に乗り込み、多様な表現が交錯する旅へと出かけます。身体、音、詩――あらゆる表現が等しく響き合う世界で、想像力を自由にはばたかせ、あなた自身の旅をみつけてみてください。

この作品の特徴

本公演は、「視覚だけでも、聴覚だけでも、その両方を使っても楽しめる」ダンス作品です。

身体の動きや音楽の生演奏に加え、コトバが「音声」と「手話」の両方で表現されます。また「音声ガイド」は、舞台上のコトバを手がけた作家が手がけることで、従来の見えない方に向けた音声描写としてのガイドではなく、あらゆる方に物語の世界を耳から楽しんでいただけるストーリーテリングとなっています。

創作の初期段階から、「クリエイティブ」と「アクセシビリティ」という二つの視点を携えながら試行錯誤を重ねてきました。多様な個性が集い、共に創り、共に楽しめる、新しい舞台作品のあり方を提案します。

※本作のアクセシビリティについてはこちらをご確認ください。

上演時間の目安と休憩

第1幕:50分

(休憩:20分)

第2幕:50分

森山かいじの創作ノートより

ある街に、詩人がいました。

詩人は、不思議な音が響く蒸気機関車に出会います。

列車に乗り、導かれるように旅に出ます。

色々な音を響かせ煌めかせ、詩を拾い繋ぎ、舞い走る列車。

列車は、さまざまな乗客を乗せ、旅をします。そして、さまざまな風景を走ります。

詩人は心を澄ませ、世界を見聞きし、詩を綴り、踊り巡ります。ラテン語の「ムジカ」は「音楽」の語源、遥昔、広く豊かな芸術を内包した言葉。

この舞台、この列車は、「詩」と「音」と「舞」が織りなす「ムジカ」を響かせます。

森山かいじが描いた1枚の絵(2021年)