このストーリー・テーブルは、観客のみなさんが事前に公演の「いつ」「どこで」「何が」起きるか、そして「どれくらいの音や光があるか」をおおよそ把握し、安心して観劇できるようにするためのものです。
大きな音や光に敏感な方はもちろん、理解を深める手助けにもなるので、あらかじめ舞台の流れを知ることでより深く作品に入り込めるという方にも役立ちます。
登場人物やストーリー展開に関する情報を含むため、一部ネタバレの要素があります。ご覧になる際はご理解の上、「第1幕」「第2幕」のストーリー・テーブルを開いてお進みください。
※大きな音や金属音が苦手な方は、イヤマフ等のご持参をお勧めします。※お知らせのベルやアナウンスの際に、客席の照明が4回点滅します。聞こえない/聞こえにくい方への合図となりますのであらかじめご了承ください。 ※音や光の受け取り方には個人差があります。あくまで目安としてご覧ください。※記載している時間はおおよその目安です。実際の進行とは異なる場合がありますのでご了承ください。



「SLムジカ」車内アナウンス
さびついた街の古びた線路に一人、詩人・レンがいる。夜空に月明かりがさし、その向こうから月を抱いた女神・メモリーの歌声が響く。
突如歌声は途切れ、暗闇の中でレンの荒い息が残る。レンは詩を紡ぐ。
遠くから不思議な音が聞こえ、月光の下に金色の遮断機が降りる。
SLムジカが現れる。レンは思わず列車に飛び乗り、夜空のもとで出発する。
満員列車の車内の喧騒。さまざまな乗客たちの声、手のおしゃべりが飛び交い、ざわめきと静けさが交差し、列車は先頭車両に導かれ進む。
列車は「エレクトレトロ」に到着。そこは電球が明滅する眠らない街。
赤いワンピースを着た"人形さん"が列車へ乗ってくる。レンも乗り込み、列車は再び出発する。
耳の聞こえない作曲家・ベンが、車内で作曲をしている。彼の羽ペンは楽譜を越えて空間を舞う。
車掌たちが切符の検札に。
おしゃべりしているバロックマダムズは「時の舞踏会」へ向かう旅の途中だと踊り出す。
月が車内に飛び込んできて、車内は大騒ぎに。月はするりと逃げ、再び夜空へ帰っていく。
車内で倒れていた「人形さん」。レンの詩を聞いて、息を吹き返し、女神・メモリーの声で歌い、踊りはじめる。
レンはいつの間にか眠り、女神・メモリーの声が夢の中でも聞こえている。
月面で月の少女・ミューズが光の羽衣をまとって踊る。
詩を綴るレン。もくもくと黒い雲が現れ、月の少女・ミューズは雲に呑み込まれ消えてゆく。レンが夢の中で厚い雲をはらいながら必死で走る。
列車の急停車とともに目が覚めるレン。



オルガンの前で作曲に苦悩するベン。苦悩の吐息が踊り、月を追いかける。世界はまわり、その軌道を列車が走っている。詩人・レンとともに。
バロックマダムズが、レンに寄り添い、レンの身なりを整える。SLムジカの一部であるSLカラクリたちは動力室でSLムジカを動かすエネルギーを作り出している。
車内の動力室。ボイラーが熱い息を吐きながら踊り働いている。SLカラクリたちが稼働して蒸気の息で汽笛を鳴らす。
列車は「ときどきの街」に到着。SLカラクリたちは、時計の指揮者のように時を刻む。バロックマダムズは、「時の舞踏会」で時計の針とともに踊り出す。
しだいに時の音がゆっくりになり、マダムたちはこの旅を終える。
雲が立ち込めて、雨が降る。暴風雨の中を走るSLムジカとベンとレン。 時折、雷鳴がとどろき光る。ベンとレンの2人は、SLムジカの両輪の如く走る。
「もののねの泉」に到着。雨が泉となり、女神・メモリーの声が響き、人形が現れる。レンの詩が歌となり、人形は月へと消えていく。レンとベンの身体は月の鼓動に呼応し、次の場所を目指して走り出す。
SLムジカは鼓動とともに月の光に向かって走り出す。蒸気を吐き、鼓動を鳴らす。月へと駆け上がっていくが、列車は傾き急降下。闇のトンネルへと吸い込まれる。
トンネルの中、バラバラになった車体。レンが1人さまよう。
闇の中で、月の少女・ミューズと出会う。
汽笛が高らかに響き、闇の中に満月が現れる。
ベンが月のスポットライトを浴び、両手いっぱいから溢れ出す「サイン・ミュージック」を奏でる。声、詩、ダンス、演奏、すべての表現が重なって、力強く命を運ぶ交響曲となり、「ムジカ」が響く。
光の中、月の少女・ミューズが白い息を吐きながら新たな軌跡を描いて走り出す。遠くから踏切の音。レンが下車すると、SLムジカはゆっくりと走り去り、夜が明ける。